1950年わが国において世界で初めて胃カメラによる胃内撮影に成功して以来、内視 鏡はその有為性が高く評価され、僅か30年間に医学各分野において飛躍的に発展しま した。特に消化管の分野では早期胃癌の診断基準の確立と胃癌の発育、他疾患との関連などについての研究成果は、日本独自の特長ある研究として、この分野における日本の国際的地位を不動のものとしました。
その間第1回国際内視鏡学会議(1966年)第1回アジア・太平洋内視鏡学会議(1973年)第1回世界気管支鏡会議(1979年)等わが国が初の開催国をつとめ本部機能を担当して世界各国に対して啓蒙的役割を果たしてまいりました。その結果、海外からの医師の研修依頼、指導医の派遣要請も頻繁にきております。
しかし、世界各国におけるこの分野の進歩も著しく、海外研究者との相互交流がますます必要となってまいりました。現在では全消化管はもとより呼吸器・泌尿器・鼻咽腔・子宮・肝臓等他臓器の各種疾患の研究においても内視鏡は不可欠の領域となっております。しかしその反面機器の精密化、検査数の増加、検査技術の高度化・複雑化、練度の高い医療技術者の育成、新医療技術への取り組み、治療面への応用、等幾多の研究課題をかかえております。
上記研究課題はいずれも緊急かつ重要な問題でありますが、その推進のためには多額の資金と歳月とが必要となります。当財団は内視鏡医学の確立、発展の歴史を築いた田坂定孝博士と志を共にする研究者ならびに協力者の力を結集してこれらの研究課題の推進をはかるための研究助成機関として設立するものであります。そしてこれら諸問題の早期確立により世界のトップレベルにあるわが国の内視鏡医学の指導的立場を維持し、その責任を果たすことにより、学術の振興発展と人類の福祉向上に寄与することが、当財団の本旨であります。
昭和56年4月18日 設立発起人
田坂 定孝 吉利 和 高安 久雄 崎田 隆夫 芦澤 眞六 城所 仂
森 純伸 丹羽 寛文 弘世 現 植谷 久三 北村 茂男
主務官庁 文部科学省 設立 昭和57年2月13日