Award 顕彰・研究助成贈呈式

令和2年度 顕彰・研究助成金対象者 決定のお知らせ

当財団は、医学の発展と人類福祉の向上を期待される研究に対する助成、及び長年に亘り内視鏡医学の進歩に貢献された先生方への顕彰を行っております。
令和2年度も 大変多くのご応募・ご推薦をいただきましたが、今年度の顕彰並びに研究助成金対象者については 選考委員会の厳正なる審査を経て、去る令和3年1月21日の第3回理事会にて審議の上、顕彰4件、研究助成40件、多施設共同研究助成(新規)2件、が決議・決定されました。
当財団39年目となる累計助成実績は、主たる事業である研究助成で1300件を超え、総計でも4,500件、金額で約17億円を超える規模となり、内視鏡医学研究の振興・普及・発展に一つの大きな役割を果たして参りました。
なお、例年開催しております「顕彰・研究助成金贈呈式」につきましては、今般のCOVID-19感染拡大による影響を鑑みまして、本年度は開催中止となりました。

顕彰・研究助成 顕彰(各50万円):4件
研究助成A(各100万円):2件
研究助成B(各50万円):38件
多施設共同研究助成(各100万円):2件

今年度の顕彰・研究助成並びに多施設共同研究助成(新規)を受賞されました先生方に関しましては、そのご功績並びに研究テーマを一覧表に掲載させていただきました。 また、今年度顕彰を受けられた、大分大学 学長の北野正剛先生、九州大学名誉教授 下関市立病院理事長・病院長の田中雅夫先生、九州大学名誉教授・原三信病院名誉院長の内藤誠二先生、藤田医科大学名誉教授の芳野純治先生より、受賞に際してのお言葉をいただきましたので掲載させていただきます。 顕彰を受賞されました先生方のご功績に、改めまして敬意を表させていただくとともにお祝い申し上げます。また、研究助成を受賞された先生方のご研究が、より良い成果を上げられますよう祈念いたします。


顕彰受賞者のお言葉

大分大学 学長 北野 正剛先生

この度、令和2年度顕彰受賞の栄誉を頂き、心より有り難く存じますとともに田尻久雄財団理事長はじめ関係の皆さまに心より御礼申し上げます。1999年より昨年まで21年間、選考委員、評議員、理事として本財団にお世話になり、多くの顕彰受賞者の御功績を存じ上げている上、かつ浅学非才の身には恐れ多い限りです。私は九州大学第二外科入局後、教室のメインテーマであった門脈圧亢進症のグループに配属されたものの、緊急手術後に亡くなる多くの患者さんをなんとか助けたいとの思いで硬化療法の安全な手技の開発に取り組みました。 その甲斐あってか?学会発表後に直接「あなたは外科の敵だ!」とも言われました。しかし結果が低侵襲治療の有用性を証明し、その流れで消化器内視鏡と内視鏡外科に取り組みました。
当初より手技の開発工夫に明け暮れ、それを広く若手に伝達する必要性を痛感し、多くの皆さまの協力を得て教育活動に邁進することも出来ました。 その中で最も大きな契機になったのは当時の丹羽寛文日本消化器内視鏡学会理事長からアジアにおける消化器内視鏡の教育活動への参画と企画運営の機会を頂いたことです。今回の受賞に至ったのは故丹羽寛文先生から頂いた大きな機会と協力頂いている全国のエキスパートの皆さまのおかげであると、改めて感じている次第です。
今後とも微力ながらアジア諸国における若手教育に貢献できればと願っています。


九州大学 名誉教授 下関市立病院 理事長・院長 田中 雅夫先生

このような晴れがましい顕彰をいただけるとは思いがけないことで、臨床的活動や基礎的研究が全て内視鏡を軸に回って来た私にとりまして大変光栄で有難くこの上なく嬉しく思います。
今の臨床研修制度になってからは不可能になりましたが、私は研修医の頃から週1回学外に出してもらい、市中病院で上部消化管内視鏡の手ほどきを受けながら大学で池田靖洋先生に師事して内視鏡の扱い方と熱意を教わりました。ちょうど内視鏡的乳頭括約筋切開術が開始されたときであったのが幸運でもありました。その技術の改良に携わりながら、外科全般の修練をする中で自然と臨床の興味が胆と膵に入って行きました。胆管内圧や膵管内圧の研究、消化管や乳頭括約筋の運動生理学的研究はERCPをもとに展開することができましたし、長く携わって参りましたIPMNの国際診療ガイドラインも膵臓に関する臨床研究から続いたものでした。全ての面で消化器内視鏡とりわけERCPが基でこれまで活動することができましたことに感謝し、今後はこの顕彰を励みに後輩諸君を励まして参りたいと思います。


九州大学 名誉教授 原三信病院 名誉院長 内藤 誠二先生

この度は歴史ある本財団の顕彰受賞の栄誉にあずかり、大変光栄に存じますとともに、選考に当たられた関係各位には厚く御礼申し上げます。
私は日本泌尿器内視鏡学会の役員の先生方とともに泌尿器腹腔鏡手術、ロボット支援泌尿器腹腔鏡手術の技術認定制度の設立、ガイドラインの作成、安全で高度な技術の教育・普及に長く携わってきました。国際的にはEast Asian Society of Endourology の Secretary Generalを12年間務め、Endourological Society では Clinical Research of Endourology Society (CROES) で多くの業績を上げました。特に、膀胱癌診断における Narrow Band Imaging の有用性を学会初の多施設国際共同前向き比較試験の試験統括医師として主導・検証し、わが国の泌尿器内視鏡外科医の status の向上と国際交流に貢献しました。今回の受賞はこれらの活動をご評価いただいたものと思っています。内視鏡医学の進歩は目覚ましいものがあります。今後は更に進化した内視鏡やロボット、さらには AI の活用によって、低侵襲手術が一層発展・普及することを期待します。


藤田医科大学 名誉教授 芳野 純治先生

この度、内視鏡医学研究振興財団の顕彰受賞の栄を賜りまして心より御礼申し上げます。名古屋大学を卒業後、当時の第二内科第六研究室(中澤三郎先生主宰)に入局し、中澤先生のご指導の下に、開発が始まったばかりの超音波内視鏡検査の消化管での臨床応用に当初より係わることが出来ました。初めは周波数が低く、解像度が不良でしたが、次第に向上し、胃癌の深達度診断、粘膜下腫瘍診断、胃潰瘍の深さの診断などのそれ以前にはなかった新たな診断学を築くことができました。そして、内視鏡の電子スコープ化、内視鏡治療の拡大などと内視鏡の役割は広く拡がり、その間に藤田保健衛生大学(現、藤田医科大学)に移りましたが、その進歩にも係わらせていただきました。また、胃がん検診の内視鏡活用が全国的に拡大すると内視鏡検診の標準化、さらに、対策型内視鏡検診が可能になると、検診方式の作成にも参画させていただきました。私が医師になった頃より内視鏡診断・治療の領域は広く拡がり、その発展の中に身を置き、体感することができたことは大きな喜びであり、大変感謝しております。